玉置陽葵、18歳。現在、車椅子モデルとしてSNSを中心に注目を集めているインフルエンサーだ。高校進学と同時に、“車椅子JK(女子高生)”としてSNSでの発信をスタートし、障がい当事者としての日常やその想いを積極的に伝えてきた。彼女の明るい笑顔と前向きなキャラクターは多くのフォロワーに支持され、モデルとしての活動に背中を押される人も増えている。
彼女の障がいは「筋ジストロフィーウルリッヒ型」。Ⅵ型コラーゲン遺伝子の変異によって引き起こされ、日本では福山型に次いで2番目に多いと言われる指定難病である。生まれた時から泣き声や呼吸の力が弱く、関節について特徴的な症状などがあり、筋肉が徐々に弱っていく。患者数は数百人ほどだが、残念ながら現時点での根本的な治療法は見つかっていない。
今回は、玉置さんが日々感じる社会のアクセシビリティや、彼女を動かす原動力、そしてこれからの挑戦についてお話を伺った。
名前 玉置陽葵(たまきひより)
障がい 筋ジストロフィーウルリッヒ型
出身地 東京都町田市
血液型 O型
チャームポイント まつ毛
趣味・夢中になっていること サッカー観戦
MBTI ISFJ(擁護者)
好きなファッション 他系統(カラフル・特徴的な服)
行ってみたい居場所 ハワイ
所属事務所 アクセシビューティーマネジメント
ー玉置さんの現在の活動について教えてください。
この春、大学生になりました。福祉を学びながら、モデルとしても活動しています。大学では社会福祉学を専攻していて、ずっと学びたかった分野なので本当に楽しいです。通学や勉強で忙しいですが、周りのサポートを受けながら、将来的には社会福祉士の国家資格を取得したいと考えています。
ー障がいが発覚したのはいつ頃ですか?それによって生活はどう変わりましたか?
私はウルリッヒ型先天性筋ジストロフィーという生まれつきの病気で、車椅子を使って生活しています。病気がわかったのは2歳の時で、母が足の太さの違いに気づいたことがきっかけでした。幼稚園や学校では、先生方の理解を得て、他の子と同じように生活していました。
しだいに、通学や長距離移動では車椅子が必要になることが増え、高校生になるタイミングで車椅子を日常的に使うことを決めました。その結果、行動範囲が広がり、もっと早くから使えばよかったと感じています。
ー車椅子の使用について、当初は抵抗があったとのことですが、それはどういった理由からですか?
中学生までは『みんなと同じがいい』という気持ちが強くて、車椅子に乗っている姿を見られることに抵抗がありました。
できるだけ歩いて過ごすようにしていましたが、友達と遊ぶ時に移動が大変だったり、親に送り迎えしてもらわないといけなかったりと不便なことが多くありました。でも、高校に入ってからは、車椅子を使うことで行動の幅が広がり、“もっと自由になれる”と感じ、日常的に使うようになりました。
ー社会のアクセシビリティについてどう感じていますか?
頻繁に感じるのは、建物の入り口にあるわずかな段差です。車椅子だと、その小さな段差が大きな障壁になってしまい、入れないお店も多いです。また、入り口のドアが重いお店もあり、自分では開けられないこともあります。
コンビニは比較的入りやすいところが多いのですが、通路に商品が積まれていると車椅子では通れなかったり、欲しい商品を手に取れないこともあります。行けるお店はどうしても限られてしまうので、よく行く場所は決まってしまいます。
ー怖かった経験などはありますか?
私の車椅子は電動なので、片手で簡単に操作ができます。押してあげようかと声をかけてくださる方もいるのですが、自分にとって体の一部のような車椅子を無理に引かれたりすることは怖いと感じてしまいます。ただ、心配して声をかけてくださること自体はとても嬉しいです。
ーアクセシビリティに関して、ファッション業界で感じる課題はありますか?
お店で服を見たいと思っても、通路が狭く、車椅子での入店が難しいことが多いです。それだけでなく、服が並んでいるラックが重く、一枚一枚見ることが出来なかったり、試着室は段差があったり狭かったりするので、車椅子のまま入ることも難しいですね。
なので、店頭よりもネットで購入することが多いです。でも、やっぱり実際に手に取って選べた方が楽しいので、もっと見やすいスペースや、車椅子でも使いやすい試着室が増えてほしいなと思います。
ー実際に服を選ぶ時に困ることはありますか?
実はズボンやスカートは、車椅子に座ると丈が上がってしまうことが多くて。あらかじめ長めのものを買う人もいますが、私の場合は家の中で歩くこともあるので、長すぎるとつまずいてしまいます。ちょうどいい長さの服があればいいなと思っています。
ーモデル活動を始めたきっかけについて教えてください。
もともとモデルになりたいと思っていたわけではなかったんですが、porteで活躍するモデルの方々を見て、自分も挑戦してみたいと思ったんです。
porteは、障がいのある方が福祉的なイメージを持たずに活躍している場として、とても魅力的でした。その憧れがきっかけで、現在の活動につながっています。挑戦する姿を見せることで、多くの人に勇気を与えられていると感じるようになり、それがまた自分の原動力になっていると思います。
※porte・・・本媒体の前身で、障がい者モデルWEBマガジンとして運営されていた(2021/3〜2023/12)
ー将来の夢や挑戦したいことについて教えてください。
自分の言葉を通して、人の心を動かせる存在になりたいと思っています。今までは障がいのある方に向けて発信してきましたが、実際に応援してくださる方の中には、障がいのない方もたくさんいるんです。私自身もこれからもっと経験を重ね、伝えられることを増やしていきたいと思っています。最終的には、本を出すのが一つの大きな夢です。
ー素敵ですね。出したい本のテーマはありますか?
まだ具体的ではありませんが、私は自分なりの幸せを見つけるのが得意だと思っています。そういったテーマで、自分の経験や想いをまとめた本をいつか出してみたいなと思っています。
ー最後に、アクセシブルな社会について玉置さんの理想を教えてください。
私は障がい者という立場で、助けてもらったり、支えてもらうことが多くあります。でも、だからと言って障がいのある人が「助けてもらうだけの人」ではないと思っています。私自身が周りの人に対してできることもたくさんあると思いますし、それを見つけながら過ごしてきたいと思っています。
誰かが一方的に助けたり、助けられたりする関係ではなく、互いに足りない部分を補い合い、支え合える社会になればいいなと思っています。
玉置陽葵さんは障がいと向き合いながらも、活動を通して自身の可能性を広げ、社会の多様性について発信し続けている。そのメッセージは、障がいを持つ方々が抱える課題を共有するだけでなく、すべての人が持つ挑戦への勇気、支え合いの大切さを伝えているのではないだろうか。彼女の存在は、よりインクルーシブで多様性に満ちた社会への一歩を後押しするだろう。これからの彼女の活動にも、是非注目していきたい。
Model Hiyori Tamaki(accessibeauty management)
Photo Ryosuke Yuasa
Hair KURUSHIMA(Y’s C)
Makeup Maila Tsuboi
Direction/Interview /Text /Edit/ Design Marino Asahi
Adviser/Producer Rie Usui
Special Thanks to Writer Kanako Taniguchi